おはぎって季節によって呼び方が変わるってご存じですか?
(所説あるので一つの説として楽しんでいただけたらと思います)
***秋のおはぎ***
おはぎを漢字で書くと「お萩」
秋のお彼岸に合わせて、秋の七草でもある「萩」をイメージして「おはぎ」と名付けられたと言われています。萩の花の可愛らしい花と小豆の粒々を重ね合わせたのでしょうね。
***春の牡丹餅***
春は「ぼたもち」という名前に変わります。実は関西はおはぎ、関東はぼたもちと言う説もあるのですが、ぼたもちは牡丹の花をイメージして作られたとも言われ、春を代表する花の1つなので春はぼたもちと呼ばれる説があります。豪華な牡丹がぼたもちのイメージに合ってるかもしれませんね。
さて、夏のおはぎと冬のおはぎは何て言うのでしょう?
答え合わせをする前に「おはぎ」と「お餅」の違いを説明したいと思います。
「お餅」と言うのはもち米を蒸して杵と臼でぺったんこぺったんこと搗きます。年末は正月のために餅つきをご家庭でもするところも多いと思います。
さて餅つきをしているご家庭の様子はどうでしょう?
家の中でひっそりと搗いているでしょうか?
いいえ、きっと家の外で大人数で楽しそうに搗いていると思います。
***半殺し***
それに対して「おはぎ」は同じようにもち米を蒸して作るのですが、その後はお餅みたいに杵と臼で搗き上げるのではなく、台の上でもち米をやさしく半分ぐらい潰すと言う工程なのです。これを俗に半分潰すので「半殺し」と言ったりします。
「半殺し」とはやけに物騒ですよね。でも全然物騒じゃありません。おいしいおはぎが出来上がります(笑)
このおはぎを作る作業は家の中で行うため「お餅」比べて静かだといえます。
さてさて、この違いを踏まえて夏と冬のおはぎの名前の発表です。
***夏の夜船***
夜船?よふね?
何か食べ物らしからぬ名前が出てきましたが、れっきとした夏のおはぎの名前です。
昔の船はエンジンなどないものですから当然帆で風を読み進んでいました。ですので音も静かでした。そして電気もないので夜になると本当に真っ暗で月の光が便り。それが当たり前の時代の話です。
夜に船が波止場に着きます。でもそれは静かに着くので誰も気づかなかったのです。いつ着いたのかわからない。それで「着き知らず」
要するにお餅をついてるのが誰にも分からないと言うおはぎの製法をなぞらえて洒落で「夜の船」→「着き知らず」→「搗き知らず」→「(搗いてないので」おはぎを作ってる」と連想ゲームの様に「夜船」と言う名前になったのです。
***冬の北窓***
さてさて、また食べ物らしからぬ名前が出てきました。でもこれもおはぎの名前なのです。
勘の鋭い方はもしかしたら分かったかも知れませんね。そうです、北の窓には何が見えるでしょうか? いや何が見えないのでしょうか?
そう、北の窓には月が見えません。「月知らず」→「搗き知らず」その理由は夜舟と同じく、いつ搗いたのか分からないという意味で「北窓」と言う名前になったという事です。北向きの窓なら夏でも見えないじゃないか!とおっしゃらずに北の窓は雪景色を楽しむためにあって、月は別の方角で楽しむことにいたしましょう。
こうして名前の由来を探っていくと、なるほどと頷けます。今のようにいろんな楽しみが無い時代、甘いものといえば贅沢ですし、こういうところでも楽しみを見つけていたのでしょうね。
ちなみにあん庵では、春のお彼岸と秋のお彼岸、夏のお盆におはぎを作っていますがそれとは別に夜船という水饅頭とおはぎを合わしたようなお菓子を夏のおはぎとして作ったりしてます。
和菓子屋界隈でもこの話はあまりしなくなったかもしれませんね。でも文化はつなげていきたいですね~